最近は、YouTubeやInstagramを見れば、誰でも簡単に運動を始められる時代になりました。
肩こり改善ストレッチ。
腰痛予防の筋トレ。
姿勢改善エクササイズ。
体幹トレーニング。
股関節を柔らかくする運動。
こうした情報がすぐに手に入ることは、とても良いことです。
実際、健康づくりにおいて身体を動かすことは大切です。厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」でも、成人や高齢者に対して筋力トレーニングを週2〜3日行うことが推奨されています。
ただし、ここで一つ大切なことがあります。
それは、同じ運動をしていても、身体の構造をある程度理解している人と、なんとなく真似している人では、効果の出方が変わるということです。
これは、難しい解剖学を覚えましょうという話ではありません。
大切なのは、
「どこを動かす運動なのか」
「どこで身体を支えるのか」
「どこに力が入りすぎているのか」
「どこが動いていないから、痛みが出ているのか」
を知ることです。
運動は“形”よりも“中身”が大切
たとえば、スクワットをするとします。
見た目だけなら、しゃがんで立つ動きです。
でも、身体の中ではたくさんのことが起きています。
足裏で床を支える。
足首が動く。
膝が曲がる。
股関節が折りたたまれる。
骨盤が安定する。
背骨が過剰に反りすぎない。
呼吸を止めずに動く。
このように、スクワット一つをとっても、身体全体のつながりが関係しています。
しかし、身体の構造を理解せずに動くと、見た目は同じでも中身がまったく違う動きになることがあります。
本当は股関節を使いたいのに、腰で頑張っている。
本当はお尻を使いたいのに、太ももの前ばかり張る。
本当は姿勢を整えたいのに、胸を張りすぎて腰が反っている。
本当は肩こりを改善したいのに、腕を動かすたびに首や肩に力が入る。
この状態では、運動をしているのに身体が変わりにくくなります。
むしろ、肩こりや腰痛がある方の場合、間違った使い方を繰り返すことで、今ある不調を強めてしまうこともあります。
身体は、使いやすいところばかり使う
人の身体は、とても賢いです。
動きにくい場所があると、別の場所でかばって動こうとします。
たとえば、股関節がうまく動かない人は、腰を反ったり丸めたりして動きを作ります。
背中や肋骨が硬い人は、肩や首を使って腕を上げようとします。
足首が硬い人は、膝や腰に負担をかけてしゃがもうとします。
呼吸が浅い人は、肩や首を使って息をしようとします。
これを、簡単に言うと「代償動作」といいます。
つまり、本来使いたい場所が使えないから、別の場所が代わりに頑張っている状態です。
自分で運動しているのに肩こりや腰痛が変わらない方は、この代償動作が起きていることがあります。
本人は正しく動いているつもりでも、身体はいつもの癖で動いています。
肩が上がりやすい人は、運動中も肩が上がります。
腰を反りやすい人は、体幹トレーニング中も腰を反ります。
呼吸を止めやすい人は、頑張るほど息を止めます。
膝を使いやすい人は、股関節ではなく膝でしゃがみます。
だからこそ、運動はただ真似するだけではなく、自分の身体がどう動いているかを知ることが大切です。
肩こり改善の運動で、首や肩がさらに疲れる理由
肩こり改善のために、肩甲骨を動かす運動をしている方は多いと思います。
肩を回す。
腕を上げる。
肩甲骨を寄せる。
背中を鍛える。
どれも悪い運動ではありません。
しかし、身体の構造を理解していないと、肩甲骨を動かしているつもりで、実際には首や肩を固めていることがあります。
たとえば、肩甲骨を寄せようとして、胸を張りすぎる。
腕を上げようとして、肩をすくめる。
背中を使おうとして、首の後ろに力が入る。
姿勢を良くしようとして、腰まで反ってしまう。
この場合、肩こり改善の運動をしているはずなのに、首や肩にはさらに負担がかかります。
肩こりの方に必要なのは、ただ肩を動かすことではありません。
首が頑張りすぎない状態で、肩甲骨や肋骨、背中が自然に動けることです。
つまり、肩こりを改善したいなら、肩だけを見るのではなく、呼吸、肋骨、背骨、骨盤、足元まで含めて見る必要があります。
腰痛改善の運動で、腰がさらに固まる理由
腰痛予防のために、腹筋や体幹トレーニングをしている方も多いです。
もちろん、体幹の機能は大切です。
ただし、腰痛がある方の中には、腰を守ろうとしてお腹や背中を固めすぎている方がいます。
その状態で体幹トレーニングをすると、さらに身体を固めてしまうことがあります。
たとえば、プランクをしているときに呼吸が止まる。
腹筋をしていると首が疲れる。
お腹に力を入れようとして腰まで固まる。
姿勢を保とうとして背中全体が緊張する。
これでは、腰痛予防のための運動が、腰を安心して動かす練習ではなく、腰をさらに守らせる練習になってしまいます。
腰痛の方に必要なのは、ただ腹筋を強くすることだけではありません。
股関節が動くこと。
背中が動くこと。
足裏で支えられること。
呼吸を止めずにお腹が働くこと。
腰だけに負担が集中しないこと。
ここを理解して動けるかどうかで、同じ運動でも効果は大きく変わります。
身体の構造を知るとは、筋肉名を覚えることではない
「身体の構造を理解する」と聞くと、筋肉や骨の名前を覚えなければいけないと思う方もいます。
でも、一般の方に必要なのは、専門用語をたくさん覚えることではありません。
大切なのは、身体の役割をざっくり理解することです。
たとえば、
足裏は、身体を支える土台。
股関節は、身体を大きく動かす場所。
骨盤は、上半身と下半身をつなぐ場所。
肋骨は、呼吸と姿勢に関係する場所。
肩甲骨は、腕と背中をつなぐ場所。
首は、本来リラックスして頭を支えたい場所。
このように、身体の役割を理解すると、運動中に見るポイントが変わります。
「とりあえず回数をこなす」から、
「今、どこを使っているのかを感じる」へ変わります。
「きついほど効いている」から、
「狙った場所に適切に入っているか」へ変わります。
「痛いけど我慢する」から、
「この痛みは必要な刺激なのか、負担なのか」へ変わります。
この違いが、運動の効果を大きく変えていきます。
身体の感覚が鈍いと、間違った使い方に気づきにくい
運動で大切なのは、筋力だけではありません。
自分の身体がどこにあり、どのように動いているかを感じる力も大切です。
これは専門的には「固有感覚」と呼ばれます。
固有感覚は、自分の関節の位置や動き、身体の状態を感じ取る感覚です。固有感覚トレーニングに関するレビューでは、固有感覚を高めるトレーニングが、運動機能や運動パフォーマンスの改善に役立つ可能性が示されています。
簡単に言うと、
「今、肩が上がっている」
「今、腰を反っている」
「今、呼吸が止まっている」
「今、足裏で支えられていない」
「今、本来使いたい場所ではないところに力が入っている」
こうしたことに気づける力です。
この感覚が育っていないと、本人は正しく動いているつもりでも、身体は違う使い方をしていることがあります。
だから、運動効果を出すには、筋肉を鍛えるだけでなく、身体を感じる力も育てる必要があります。
呼吸を理解していないと、運動は力みやすくなる
自分で運動している方に多いのが、呼吸を忘れていることです。
頑張るほど息を止める。
深呼吸しようとして肩が上がる。
お腹に力を入れようとして呼吸が浅くなる。
姿勢を保とうとして肋骨が固まる。
このような状態では、身体は緊張しやすくなります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ストレッチングを行う際には息を止めないことが大切で、ゆっくりと深い呼吸には緊張を和らげる効果があると説明されています。
これはストレッチの話ですが、運動全般にも大切な視点です。
呼吸が止まると、首、肩、お腹、腰に力が入りやすくなります。
肩こりがある人は、運動中に肩で呼吸をして、さらに首や肩を疲れさせてしまうことがあります。
腰痛がある人は、呼吸を止めてお腹や背中を固め、腰を守りすぎる動きになってしまうことがあります。
だからこそ、身体の構造を理解するうえで、呼吸は外せません。
呼吸は、ただ酸素を取り込むだけではありません。
肋骨を動かし、背中を動かし、お腹の圧を調整し、首や肩の緊張にも関係します。
運動の効果を出したいなら、どの動きでも「呼吸ができているか」を確認することが大切です。
フォームは、見た目だけでは判断できない
運動でよく言われるのが「正しいフォーム」です。
もちろん、フォームは大切です。
しかし、フォームは見た目だけでは判断できません。
外から見ると同じ姿勢でも、身体の中で起きていることは人によって違います。
たとえば、腕を上げる動き。
ある人は、肋骨や肩甲骨が自然に動いて腕が上がっています。
別の人は、首を固め、肩をすくめながら無理やり腕を上げています。
見た目はどちらも「腕が上がっている」かもしれません。
でも、身体への負担はまったく違います。
前屈も同じです。
ある人は、股関節から折りたたむように前屈しています。
別の人は、腰だけを丸めて無理やり手を床に近づけています。
見た目はどちらも「前に倒れている」かもしれません。
でも、使っている場所は違います。
つまり、正しいフォームとは、形だけの問題ではありません。
どこで支えているか。
どこが動いているか。
どこに力が入りすぎているか。
呼吸が止まっていないか。
痛みを我慢していないか。
ここまで見て、初めて運動の質が分かります。
自己流で変わらない人は、努力不足ではない
自分で運動しているのに変わらない方は、自分を責める必要はありません。
努力が足りないわけではありません。
多くの場合、原因は「量」ではなく「質」です。
回数が足りないのではなく、狙った場所を使えていない。
時間が足りないのではなく、負担がかかる動きを繰り返している。
根性が足りないのではなく、身体の状態に合っていない。
運動が悪いのではなく、順番が合っていない。
こういうケースがあります。
特に、肩こり、腰痛、疲れやすさ、不眠、頭痛などがある方は、身体がすでに緊張していることがあります。
その状態でさらに頑張ると、身体はもっと固まりやすくなります。
だからこそ、不調がある方ほど、ただ運動を増やす前に、身体の構造と自分の癖を知ることが大切です。
フィードバックがあると、運動の質は変わりやすい
自分の癖は、自分では気づきにくいものです。
「肩の力を抜いているつもり」
「腰を反っていないつもり」
「呼吸しているつもり」
「正しくできているつもり」
でも、実際に見てもらうと、違う動きになっていることがあります。
筋力トレーニングに関するシステマティックレビューでは、視覚的・言語的なフィードバックが、運動中のパフォーマンスや技術、筋力などの適応に良い影響を与える可能性が報告されています。
これは、ただ厳しく指導を受ければいいという意味ではありません。
大切なのは、自分では気づけない身体の使い方に気づくことです。
「今、肩が上がっています」
「そこは腰ではなく股関節を使いたいです」
「呼吸が止まっています」
「背中ではなく首に力が入っています」
「足裏で支えられていません」
こうしたフィードバックがあることで、運動の意味が変わります。
ただ動く運動から、身体を理解する運動へ変わっていきます。
身体の構造を理解すると、運動の選び方も変わる
身体の構造を理解していないと、不調があるときに「とにかく効きそうな運動」を選びがちです。
肩こりだから肩甲骨体操。
腰痛だから腹筋。
姿勢が悪いから背筋。
身体が硬いからストレッチ。
疲れやすいから有酸素運動。
もちろん、これらが合う人もいます。
でも、身体の状態によっては、順番が違うことがあります。
肩こりの人でも、最初に必要なのは肩甲骨ではなく、呼吸かもしれません。
腰痛の人でも、最初に必要なのは腹筋ではなく、股関節かもしれません。
姿勢が悪い人でも、最初に必要なのは胸を張ることではなく、骨盤や足裏の感覚かもしれません。
疲れやすい人でも、最初に必要なのは運動量を増やすことではなく、脱力かもしれません。
身体の構造を理解すると、「何をするか」だけでなく、「何から始めるか」を考えられるようになります。
この順番が、不調改善ではとても大切です。
自分で運動している人ほど、確認してほしいこと
自分で運動している方は、次のことを一度確認してみてください。
その運動は、何のために行っていますか。
どこを使う運動か分かっていますか。
どこに力が入りすぎてはいけないか分かっていますか。
呼吸は止まっていませんか。
運動後に身体は軽くなりますか。
それとも、首・肩・腰が余計につらくなりますか。
痛みを我慢して続けていませんか。
回数や時間だけを目標にしていませんか。
もし運動後に毎回つらさが増えるなら、運動量が足りないのではなく、身体の使い方が合っていない可能性があります。
その場合、もっと頑張る前に、まず身体の構造と自分の動きの癖を見直すことが大切です。
LIFE SMILE GYMが大切にしていること
LIFE SMILE GYMでは、ただ運動メニューをお伝えするだけではありません。
肩こりや腰痛、疲れやすさがある方に対して、まず身体の状態を見ます。
呼吸は浅くないか。
首や肩に力が入りすぎていないか。
腰を反らせて姿勢を保っていないか。
股関節や背中は動いているか。
足裏でしっかり支えられているか。
日常生活でどんな癖があるか。
運動中にどこへ負担が逃げているか。
こうしたことを確認しながら、その方に必要な順番で整えていきます。
大切なのは、難しい知識を覚えることではありません。
自分の身体を理解することです。
なぜ肩こりが出るのか。
なぜ腰痛が繰り返されるのか。
なぜ運動しているのに疲れるのか。
なぜ姿勢を良くしようとすると苦しくなるのか。
なぜ同じ運動をしても、効果が出る人と出ない人がいるのか。
ここが分かると、運動の意味が変わります。
運動は、理解して行うと身体が変わりやすい
自分で運動することは、とても素晴らしいことです。
ただし、不調を改善したいなら、ただ動くだけではなく、身体の構造を少し理解することが大切です。
どこを動かすのか。
どこで支えるのか。
どこに力が入りすぎているのか。
どこが動いていないのか。
呼吸はできているのか。
痛みを我慢していないか。
これを知るだけで、同じ運動でも効果の出方は変わってきます。
肩こりや腰痛、疲れやすさを年齢のせいにする前に、まずは自分の身体がどのように動いているかを見直してみてください。
運動しているのに変わらない方に必要なのは、もっと多くの運動ではなく、身体を理解したうえで行う運動かもしれません。
鍛える前に、まず整える。
動く前に、身体を知る。
頑張る前に、余計な力みを抜く。
そして、自分の身体に合った順番で運動すること。
それが、肩こりや腰痛に振り回されず、家事も仕事も趣味も旅行も楽しめる身体づくりにつながっていきます。

